36)今帰った客のテーブルにワイン残ってるよね? アレちょうだい!
= 弱者たちの天国、スペイン!? =
この間久しぶりに日本のテレビ番組を見ていたら、車いすの身障者が駅にやって来て、何人かの駅員たちが、そのイスをヨイショと抱えてあげ、電車に乗せていました。
そういえば私も以前日本で、テレビの取材でそのお手伝いをしたことがありました。けっこう大変な労働ですし、彼らの自立心を損なわない配慮もしなくてはなりません。
日本の駅員さん、本当にお疲れさま!
でもなぜかここバルセロナで、そんな光景に出会ったことがありません。たまたまなのかもしれませんが、もしかするとここではその必要がないのかもしれません。
というのも、車いすやベビーカーが差し掛かると必ずと言っていいほど近くの通行人が手助けをするからです。これには感激します。バスの中でも「車いすが降りるよ、あれ出して~!」と、皆が大声で運転手に知らせ、乗降用のスロープを出してもらいます。
身障者と老人子供は、みんなで大切にしよう!
なんともいい加減なこの国で、なぜかこれだけはしっかり根付いているようなのです。
ほとんどのスーパーマーケットの前には物乞いの人たちが、投げ銭の器を置いて座っています。でもどのスーパーも嫌な顔一つせず、それを放置しています。そればかりか、以前もお話ししたように、かなりの人々が彼らにお金を恵んであげるのです。
これは、日本ではほとんど見られない光景でしょう。以前、銀座の有名デパート前に座ってデッサンをしていた有名な画家が、迷惑だからと追い払われた話を聞いたこともあります。
一体、この違いは何なのでしょう??
ご存知のように私は今、ビリヤードに凝っています。というのも、信じられないコトにタダ同然で何時間でもプレイすることのできる、バールを見つけちゃったからです。
そこによくやって来る一人の老人がいます。不自由な足をズリズリしながら歩く上、
少々ボケていて話しもハッキリ通じません。ビリヤードをしてもルールもへったくれもなく、マグレで当たると一人で喜んで、ソロバンにしっかり点数を入れるのです。
その彼はワインが大好きなようで、いつも赤ワインを飲みながらプレイ(?)しているのですが、あるときビックリする光景を目にしてしまったのです。玉台の近くに座ってゲームを見ていた彼が、カマレーロ(ウエイター)に向かってこう叫んだのです。
「今帰ったお客さんのテーブルに、ワインが残ってるよね?」
「そう、そう、それ持ってきて!」
呼ばれたカマレーロはまたかと苦笑いをしながらも、まだけっこう中に残ってるワインを、ご親切にもグラスについで、彼に渡してあげるではありませんか!
シンジられない~!!
おそらく彼はいつもこの手でワインを入手して、それを堪能しながらなんと完全無料でビリヤードまで楽しんでいるのでしょう。 でもだれ一人、彼を排除するカマレーロはいません。 そればかりかみんな、一言二言、笑顔で挨拶までかわしているのです。
コレって、ゼッタイに、日本ではあり得ないことでしょう?
きっと日本なら、即刻追い出すか、あるいは警察に連絡するか、いずれにしても犯罪者扱いが関の山。もしかすると私たちは“とっても親切!”な日本人への評価を180度転換しなくてはいけないかもしれません。その上さらに彼らは、コーヒー一杯で格安にビリヤードを楽しませてもらってる弱者ワタシにも、トッテモやさし~のです。(笑)
スペイン人さん、いいトコあるじゃない!!
でも、もしこんな客がワンサカやって来たら、どうするの??
ーー次回は、「恥と自慢」をお送りする予定ですーー
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