37)ね、ウチの娘可愛いでしょ、そのうえ頑張り屋だよねー!
= 恥と自慢 =
見て見て、これがウチの子、可愛いでしょ?
ちょっと親しくなると家族の写真を取り出して他人に見せつける欧米映画のシーンを、あなたも見たことがあるはずです。 コレ、実際その通りなんです。今では下手するとスマホの中の山ほどの写真を、いつまでも見続けさせられる羽目になってしまいます。
子供だけならまだしも、奥さんや父親に母親、はたまたイトコにハトコ・・・、それも一枚一枚「可愛いくない?、いい男でしょ! 美人ダロー?」と押しつけられては叶いません。でも彼らにとってこれは正当な権利、それこそ生きる喜びでもあるのです。
日本人には、こんなこと恥ずかしくてとてもできません。
自分の家族を自慢することは“恥”でもあり、周囲から「嫌らしい奴」とレッテルを
貼られてしまう危険だってあります。だから日本人は「ほんとダメ息子なんです」とか「ウチの愚妻には困りもので」とか、身内をケナさなければならなかったりします。
いわゆる“謙譲の美徳”。でもこれは欧米人にとって理解不能です。
逆に彼らにあるのは“自慢の美徳”(?)。 家族を誇らしげに吹聴するのは常識。
どんなにマズくても、「ウチの奥さんの料理は天下一品だよ!」と宣えるし、それが障害者であっても、臆することなく「いい子でしょ?」と言えるのです。実際ここでは障害を持つ子供たちを“神様から授かった天使”と呼んで、自慢するくらいなのです。
欧米人のこの天真爛漫なココロには脱帽です!
マリア(仮名)という若い女の子がいます。彼女はまさにスペイン的なアンダルシアの出身で、今はここバルセロナで働いています。最初にこの街で見つけた仕事は、マーケティングの事務職、朝から晩までオフィスでコンピュータとにらめっこの生活でした。
数ヶ月も経つとそこを辞め、コロッと一転して客商売に転向しました。まずマーケットでジュース類の販売、それを2~3ヶ月で辞めると今度はバールでちょっと働いた後、なんと有名なカジノでルーレットなどのディーラーの修行を始めたのです。 緊張した面持ちで、リッチなお客さん相手に初仕事をしていた彼女の顔が印象的でした。
ところがその約1年後にはまた職種を変え、レストランのバーでカクテルを作るバーテンダーの勉強を始めました。分厚い教科書を手にオベンキョーの毎日で、ホントにびっくりの行動力です。とても私たちにはデケマヘン。 ついこの間は新しいカクテルを学ぶため、遠く日本にまで行って来たのですから。
その上ビックリなのは、彼女の親たちです。
彼女の仕事が変わるたび夫婦共々バルセロナにやって来て、それがどんな仕事だろうと新しい職場を訪れては、感激の面持ちで嬉しそうに自慢するのです。「ウチの娘って、ホントよく頑張ってるでしょ!」「さすが私たちの子供よねっ!!」
日本だったら多分こういう娘さんは、親にとっては頭痛の種。気まぐれで、腰の落ち着かない、忍耐力の無い困ったチャン。なんとか定職に就いて、安定した生活を築いて欲しいと願うことでしょう。 何故ならそれは周囲に対する“恥”でもあるからです。
でも、ここは全く違うのです。
それどころか、彼女の情熱と行動力を誉め称え、高らかにエールを送るのであります。
ね、ウチの娘可愛いでしょ! よくやってるよね! 最高でショッ??
さあ、あなたは“恥と自慢”、どっちを選びますか??
ーー次回は、「“タトゥー”と“タブー”」をお送りする予定ですーー
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尚、著作権は放棄していません。この文章を引用する場合は必ず発行者へ連絡ください。