“ I must ” は、義務なんかじゃない !!
みんなアベコベ、日本とスペイン!(10)
(Todo lo contrario, Japón y España)
----- ・・・しなければ、ならない ?? -----
「今朝からなんだか歯が痛い、こりゃあ歯医者に行かなきゃならないかな~?」とか、
「お金を使いすぎちゃった、もう少し財布のひもを締めなければいけないなあ」とか、
私たちは日頃なにげなく、この「しなければ、ならない」形の、言葉を使っています。
これは英語では“I must --”や“I have to --”に、そしてここのスペイン語では
“Tener que --”や“Hay que --”といった言葉にあたります。
そこでこの日本語教室でも、生徒たちがこういった意味のことを表現したい時には、
「そういう時には、日本語では“・・・しなければ、ならない”というんだよ!」と、
教えて、あげなければなりません。
ところがこれが、スペイン人達にはどうしても理解できないのです。
従ってこの不思議な表現を説明するためには、一連の手順を踏まなくてはなりません。
まず、
日本には、何をするにもお上にお伺いを立てなければならなかった歴史がありました。
お上の意向を確かめるには、次の4種類があります。
1) 何かをしても、いい
2) 何かをしては、いけない
3) 何かをしなくても、いい
4) 何かをしなくては、いけない
そしてこの 4)が“I must--”や“I have to--”、“Tener que--”や“Hay que--”
に当たるのです。
・・とまあ、こんな風に説明してみても、ゼ~ンゼンわかってくれません。
彼らにとって奇妙なのは「なぜイチイチお上の意向を気にするのか?」もありますが、
なによりもまず、「どうして二重の否定形でなければならないのか?」という点です。
(ハハ、ここまで説明するのにも、どれほど「・・・しなければ、ならない」形の言葉
を使っていることか・・。私たち日本人にとっては、ごく当たり前のことなのですが、
スペイン人やヨーロッパ人達にとっては、なんとも不思議でならないようなのです)
私達はこれらをまた、自分自身に課する責務や義務としても使いますが、彼らにとって
“I must--”や“I have to--”の言葉は、決して責務でも義務でもないようで、なんと
それらは、毅然と胸を張った、彼ら自身の意思や権利の表現であるらしいのです。
ある生徒はこう言いました。
「“I must--”や“I have to--”を、“・・しなければ、ならない”と訳すのは、
そのニュアンスが全く違ってしまって、極めておかしい。 もしどうしても翻訳したい
なら、「・・する必要がある」とした方が、ずっと原文に近いはずだ!!」
う~ん、そうかな~~??? でも、なんか違うんだよな~?
「・・する必要がある」は、“I need --”や、スペイン語の“Necesito --”という
言葉に当たるはずだし、だいいち“I need --”と“I must--”では、そうとう意味に
開きがあるんじゃないの~~???
言葉の翻訳は、ほんとうにむずかしい!
でも外国人の心を完全に理解できるよう努力しなければいけないなあ!
次回は、「愚弄のコトバ」を、お送りする予定です。
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