= 謙遜と ヘリクダリ =
みんなアベコベ、日本とスペイン!(10)
(Todo lo contrario, Japón y España)
----- ツマラナイものなんか、欲しくないっ! -----
ヨーロッパ人(とくにスペイン人)に“遠慮”の気持ちが欠けているということは、
当然ながら“謙遜やヘリクダリ”のココロなんか、そのカケラもないということです。
最近はここスペインにも沢山の英語学校ができていますが、彼らの英語力は一般的に
きわめて低いといわざるを得ません。文法的にもほとんど同じ、そのうえ異常なまでの
動詞変化もない英語をどうして習得できないのか、我々には理解できませんが・・・。
でも彼らは平気で「あんた、英語は話せるのか?」と問いかけてきます。
ちょっと込み入った話をしようとする時に、こっちのスペイン語力を気遣ってくれるの
はアリガタイのですが、なんと彼らの英語は最初の一行だけ。その後は、すっかりスペ
イン語に戻ってしまっているではありませんか。 なんのこっちゃ!!
それでも彼は、「自分は英語がしゃべれるんだ!」と思っているのです。
そんなわけで、私の日本語クラスの生徒にはこんな風に教えないわけにはいきません。
「日本には“謙遜”のココロがあって、少ししか話せない時はもちろん、どんなに
流暢に話せても、“まだ少しだけしか日本語を話せません”というのですよっ・・・」
すると彼らは目をひんむいて食いついてきます。
「この文章は二重の否定になっている。つまりはマイナス×マイナスということで、
結局はプラスになる。だから、“私は少し日本語を話せる”と同じことではないか?」
うーん、まさにごもっとも。でもちょっと違うんだよネ~!!
ここバルセロナもとどまるところを知らない日本食ブーム。日本料理を習いたいという
人の数は年々増え続けて、私の日本語クラスにも教えて欲しいと頼み込んでくる人達が
多くなってきました。何を習いたいの、と聞くと、そのほとんどが“寿司”と“刺身”
と答えます。
「あのネ、日本ではね、“お寿司”が一人前に握れるようになるには、毎日、朝から晩
まで修行して、10年はかかると言われているんですよ、とても私ごときが教えられる
ものではありませんっ!」と、丁重にお断りするしかありません。
でも彼らの顔はとても不思議そう、まったく理解できないのでしょう。そして現実に、
半年や一年料理学校に通っただけで、こう胸を張るスペイン人たちが沢山いるのです。
「ワタシはスシもサシミも料理できま~す!」
もっとスペイン人たちに理解できないのは“ヘリクダリ”。日本語には“尊敬語”と
“丁寧語”に加えて、“謙譲語”、つまり自分を相手より一段下げてへりくだって話す
習慣があると話しても、それは彼らの理解の範囲をはるかに超えているのです。
何故ならここでは、たとえ先生や大統領や、いや国王とでさえ対等な立場。 いやいや
きっと感覚的には対等というより、自分自身が社会の中心に位置しているのです。なぜ
自分を相手より下げなくてはならないのか、彼らには想像さえできないことでしょう。
「日本では贈り物をする時に、“ツマラナイものですが”と言うんですよ」
「エーッ、ツマラナイものなんか、欲しくないよっ!!」
次回は「“I must”は、義務なんかじゃない!」を、お送りする予定です。
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